こんにちは。吉川です。

 

今回は「専門家とMBA」というお題目で、私なりの考えを書こうと思います。

 

私は香港にあるHong Kong University of Science and Technologyへ留学しMBAを取得しました。MBAといえば欧米が主流な中で何故香港かという点については、また機会があれば書くかもしれませんが今回は割愛します。

 

さて、人がMBAを取得する理由は様々です。社会経験を積んだ上で改めて勉強したい、キャリアアップに必要である、自己実現をしたい、モラトリアムを楽しみたい等、色々な方がいると思います。一方で、世界的に見てもMBA批判は少なからずありますが、特に日本企業においては、特定の業種、業界を除いてあまり評価されない(少なくとも投資とリターンが合わない)というケースも少なくないように思います。

 

それでも私は専門家(士業など)こそ、MBAで学ぶ価値は大いにあると思います。

 

私はリクルートで5年間、様々な経験をしました。本社のコンプライアンスマネジャーとして、経営層に近い立場でたくさんのマネジメント経験を積みました。その間、多くの士業等の専門家とも一緒に仕事をしてきました。その中で得た経験として、事業会社側の立場から誤解を恐れずに言えば、「専門知識しかない専門家は全く使えない」ということです。専門知識だけならGoogleで検索すれば十分です。逆にどういった専門家が本当に頼りになる専門家であるかというと、専門家の論理に終始せず、相手方(経営者)の立場になって議論ができ、提案ができる専門家です。

 

別の記事でも書きましたが、経営者は多くの複合的な不確実性の中で日々意思決定をしています。例えば、会計士や税理士に対しては勿論会計や税務の相談をするわけですが、経営者にとっての会計や税務の論点は、その他数ある経営論点の中の一部に過ぎず、意思決定に際してはあくまでも全体の中で考えています。これを理解せずに、会計や税務の論点だけを切り取り、あたかもそれが目の前の課題の全てであるかのような専門家の提案は、時に全くの的外れであり、「空気の読めない」ものとなるわけです。

 

では頼れる専門家になるために、具体的にどうしたらよいのでしょうか。大きく分けて2つです。1つ目はマインド、あるいはスタンスといった問題です。自分本位ではなく常に経営者の立場になって物事を考える、そうした姿勢そのものであり、これは後述する2点目と比べても圧倒的に重要です。意識を変えればよいだけですので、ある意味簡単ではありますが、一方で、実践するには性格や資質に依るところも大きく、また長年「先生」と呼ばれてきた専門家にとって、これを受け入れ自ら変革することは、必ずしも容易でないかもしれません。

 

2つ目は知識や経験です。上記のマインドやスタンスに比べれば、実は遥かにどうでもいい話なのですが、とはいえやる気だけあってもそもそも材料がないことにはどうにもならないので、現実的にはこれも重要です。知識にせよ経験にせよ、習得するのにある程度の時間を要するという意味では難しいかもしれませんが、一方でこれは投資(時間やお金)さえすれば誰でも手に入れられますので、その意味では簡単ともいえます。

 

さて、1点目のマインドやスタンスについては、実はリクルートのような会社にしばらくいると嫌でも徹底的に叩き込まれたりするのですが、これは今回の主題ではないので割愛します。今回は2点目の知識や経験について書きます。

 

既述したように、経営者は多くの経営論点を常に複合的に考えています。組織、人事、法律、事業開発、マーケティング、セールス、、製造、財務、会計、税務、IT等々、数え上げたらキリがありません。ただ多くの経営者は、これらあらゆる分野に全て精通しているわけではありません。多くの場合、優れた経営者とは、これら複合的な要素を全てひっくるめ、周囲のスペシャリストに支えられながら不確実な中で連続的に最適(と思われる)な意思決定ができる人物です。

 

こうした経営者と同じ目線で専門家が議論をするために、(専門領域に関するスペシャリティは当然として)必要な素養は何でしょうか。色々な答えがあると思いますが、私は「様々な経営論点の広範に亘る知見」であると考えます。なにも会計士にマーケティングのスペシャリストになれとか、弁護士にITのスペシャリストになれと言っているわけではありません。自分の特化した専門知識に加え、その他の領域に関する幅広い知識や経験(あえて「広く浅く」とは言いません)を備えることで初めて、経営者の視点で物事を考えられる、少なくともスタートラインに立てるのではないか、ということです。

 

何となくMBAが近付いてきましたね。私の母校もそうですが、多くのMBAは世界で活躍するビジネスリーダーを輩出するための教育を謳っています。そのためのプログラムとしては、中には専門性を強調したもの(Finance MBA等)もありますが、多くの場合、広範に亘る経営論点について広く(そしてある程度深く)学ぶものであると思います。

 

勿論、MBAは単なる手段の一つであって、他にもやり方はいくらでもあると思います。知識の習得であれば本を読む、あるいは何らかの講座に通ってもよいでしょう。また、知識だけでは現実問題なかなか機能しない(これはいくら実践形式を重んじるMBAにおいても同様です)ので、キャリアのどこかのタイミングで事業会社、(特に企業規模は問いませんので)できれば経営者に近い立場で、実際に仕事をして経験を積むということが、遠回りのようで、実は一番の近道かもしれません。

 

毎度のことですが長くなり失礼しました。私自身、私の思い描く理想の専門家になるために、これまでたくさんの経験を積み、知識を蓄え、日々試行錯誤しながらお客様と接しています。幸せなことに、事務所には頼れる同僚にも恵まれています。ゴールはありませんが、これからも経営者の頼れるパートナーであるために、日々世の中にアンテナを張りながら自己研鑽に励みたいと思います。

 

SkyWalkについて、気になった方は是非公式ウェブサイトもご覧ください。

https://skywalktax.jp/

 

ではでは。(吉川周佑)